── ASOが下した“極めて合理的”なスポンサー判断を読み解きます
※ASOとは、ツール・ド・フランスを運営している会社のことです。
ワイン売り場で、自転車のラベルが印象的な「コノスル(Cono Sur)」を見かけたことがある方は多いのではないでしょうか。
価格は手頃で、味も安定しており、「コスパの良いチリワイン」という印象を持たれがちです。
しかしこのコノスルは、
世界最高峰の自転車レースであるツール・ド・フランスの公式ワインパートナーでもあります。
チリ産ワインが、
ワインに対して強いプライドを持つフランスを象徴するイベントと提携する。
冷静に考えると、これは非常にハードルの高い挑戦です。
それでもこの提携は実現し、結果として成功しました。
本記事では、マーケティングの視点から
**「なぜツール・ド・フランス(ASO)はコノスルを選んだのか」**を、合理的に読み解いていきます。
コノスルのマーケティング戦略は、なぜ優れているのか
Cono Surは、単なる低価格ワインブランドではありません。
同社は、一貫した思想を、誰にでも伝わる形で可視化するブランド設計を行っています。
その象徴が、自転車のラベルで知られる「Bicicleta(ビシクレタ)」シリーズです。
この自転車は、
畑を自転車で移動する生産スタイル
環境への配慮
人の手と足で土地に向き合う姿勢
といった、実際のワイン造りの思想を表現したものです。
重要なのは、この自転車ラベルが
最初からツール・ド・フランスを意識して作られたものではないという点です。
チリ産ワインでありながら、なぜツール・ド・フランスと組めたのか
Tour de Franceは、単なるスポーツイベントではありません。
フランス文化
土地(テロワール)
歴史と誇り
これらを背負った、国民的・世界的イベントです。
その公式ワインにチリ産ブランドが選ばれることは、
感情論で見れば違和感を持たれても不思議ではありません。
しかしマーケティング視点で見ると、
この判断は極めて合理的でした。
【筆者の仮説】ASOがコノスルを選んだ3つの合理的理由
ここからは、公開情報や海外報道を踏まえたうえでの
筆者自身の考える合理的な理由を整理します。
理由A:自転車という「説明不要の記号」を持っていたからです
コノスルのBicicletaシリーズは、
自転車
自然
人間の身体性
土地との関係性
といった、ツール・ド・フランスの価値観と完全に重なります。
ASOの立場で考えると、
世界中の視聴者に、説明なしで意味が伝わるスポンサー
であることは非常に重要です。
スポンサー露出は一瞬です。
その一瞬で文脈が伝わるかどうかが、成否を分けます。
理由B:2014年のUK開幕ステージで実証実験をクリアしていたからです
コノスルは、いきなりツール全体の公式ワインになったわけではありません。
2014年:イギリス開催のグラン・デパール(開幕ステージ)でスポンサー参加
2015年:複数年契約で公式ワインに昇格
これは、マーケティング的に見ても非常に典型的な
**PoC(小さく試して、うまくいったら拡張する)**の流れです。
ASOは感情ではなく、
実績とリスク評価に基づいて判断したと考えられます。
理由C:国際イベントに耐える供給力と実行力があったからです
ツール・ド・フランスは、
数週間にわたる開催
多国間放映
VIP・公式レセプション対応
など、非常にオペレーション負荷の高いイベントです。
その公式ワインには、
安定した品質
グローバル供給力
プロモーション実行能力
が求められます。
コノスルは
Concha y Toroグループ傘下という点も含め、
企業としての信頼性と実行力を備えていました。
フランスの人々は、コノスルの味を認めているのでしょうか
結論から言うと、
一般消費者層では
→ 「価格以上にバランスが良い」「日常ワインとして優秀」という評価が多いです。
一部の専門家や旧世界ワイン重視の層では
→ 「熟成や複雑性では別ジャンル」という慎重な評価もあります。
ただしこれは、
味が否定されているわけではなく、評価軸の違いです。
ASOが求めたのは、
フランス最高峰のグラン・ヴァンではなく、
世界中の人が納得できる公式ワインだったと考えるのが自然です。
自転車ラベルとツール・ド・フランスは「後からつながった」
この事例で最も美しい点はここです。
自転車ラベルは、後付けのマーケティング施策ではありません。
先にあった思想が、後から最高の舞台と結びつきました。
無理に寄せていないからこそ、
この提携は説得力を持ち、結果として成功しました。
まとめ:ASOの判断は、感情ではなく合理性でした
ASOがコノスルを選んだ理由は、
自転車という普遍的な記号性
実証済みのスポンサー実績
国際イベントに耐える企業体力
この3点で、ほぼ説明がつきます。
国籍や感情論を超えて、
最も合理的だったから選ばれた。
コノスルの事例は、
「ブランドはどこで生まれたかより、何を語っているかが重要である」
ということを、非常に分かりやすく示している成功事例だと言えるでしょう。
参考情報(海外サイト・一次情報)
◎参考元
Vivino(フランス語含むユーザーレビュー)
https://www.vivino.com/
The Drinks Business(業界メディア)
https://www.thedrinksbusiness.com/
La Revue du Vin de France(仏ワイン専門誌)
https://www.larvf.com/
La Passion du Vin(仏ワインフォーラム)
https://www.lapassionduvin.com/
Cono Sur 公式サイト
https://www.conosur.com/
Tour de France / ASO 公式サイト
https://www.letour.fr/

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