― なぜ今、国は「病院に行かない診療」を認めたのか ―
最近、「オンライン診療」という言葉を耳にする機会が増えました。
以前はほとんど聞かなかったのに、なぜ急に広がったのでしょうか。
結論から言えば、
オンライン診療が増えたのは、流行でも偶然でもありません。
国の制度変更と、社会全体の変化が重なった「必然」です。
オンライン診療とは何か
オンライン診療とは、スマートフォンやパソコンを使って、
医師の診察を非対面で受ける医療の形です。
自宅から受診できる
ビデオ通話や音声通話で診察
必要に応じて処方薬が自宅に届く
重要なのは、これは「簡易な健康相談」ではなく、
正式な医療行為だという点です。
実は昔から「できなかった」わけではない
ここが誤解されやすいポイントです。
オンライン診療は、
**長いあいだ事実上“制限されていた”**というのが正確な表現です。
以前の制度の特徴
原則として再診のみ
対面診療が強く前提
実施条件が非常に厳しい
つまり
「制度上は可能だが、現実的にはほぼ使えない」
状態でした。
転換点となった法・制度の変更
流れが大きく変わったのは、コロナ禍です。
感染症拡大により、
病院に行くこと自体がリスク
医療機関の混雑が社会問題化
この状況で国が判断したのは、
**「対面前提の医療体制は非常時に弱すぎる」**という事実でした。
制度上の大きな変化
初診のオンライン診療を条件付きで認可
保険診療としての整理
実施ルールを明文化し、全国で運用可能に
結果、オンライン診療は
例外的な対応から、正式な選択肢へと格上げされました。
コロナは「原因」ではなく「引き金」
よく「コロナがあったからオンライン診療が始まった」と言われますが、
これは半分正しくて、半分違います。
正確には、
もともと必要とされていた仕組みが、コロナで一気に解禁された。
実際に運用してみて大きな問題が出なかった
医師・患者の双方が「これは使える」と実感した
この「実証」が、その後の制度定着につながりました。
技術と生活者の準備が整っていた
法改正が一気に進んだ背景には、技術の成熟もあります。
スマホが生活必需品になった
ビデオ通話が当たり前になった
電子処方・配送インフラが整った
もしこれが10年前なら、
制度を変えても現場は回らなかったでしょう。
制度を変えた瞬間に、社会が受け止められる状態だった
ここが大きな違いです。
医療側の事情も見逃せない
オンライン診療は、患者のためだけの制度ではありません。
医師不足
地域偏在
高齢化による医療需要の増加
すべてを対面で診る医療は、
すでに持続可能ではなくなりつつあります。
オンライン診療は、
軽症・定期診療・相談レベルを切り分ける
医療リソースの再設計でもあるのです。
オンライン診療は「対面の代わり」ではない
誤解されがちですが、
オンライン診療は対面診療を否定するものではありません。
触診や精密検査が必要な場合は対面
そうでないケースはオンライン
使い分けることで、医療全体の質が上がる
これが制度設計の狙いです。
おわりに
オンライン診療が広がった理由は、
「便利だから」ではありません。
法制度が追いついた
社会が変わった
医療が限界を迎えていた
その結果として、
「病院に行かない医療」が選択肢として認められた。
オンライン診療は、
未来の医療ではなく、
すでに始まっている「現在の医療」です。

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