格闘技ファンなら誰もが知っている日本のトップファイター。那須川天心と武尊。
同じキックボクシングという領域であるにもかかわらず、所属団体が異なるが故にファンだけではなく選手同士も対戦を熱望しても試合が実現していないのが現状です。
そこで今回は、現在の格闘技ブームの源泉とも言えるこの両者の対戦が2020年に実現するのかどうか、実現するとどうなるのかを考察したいと考えています。
ここでは両選手の実績はもう語らず、率直に僕の今の考えを綴ります。そしてはじめに結論から言うと、「見たいけど、終わらせたくない」です。
那須川天心 vs. 武尊の試合が実現する可能性はあるのか?
無いとは言い切れないのですが、限りなくゼロに近いと考えています。
那須川天心の所属するRISEと、武尊の所属するK-1の2つの団体は双方ともキックボクシングの興行を行っておりますが昔から仲の良い団体という感じはありませんでした。その辺は他に譲りますが、選手同士の発言に対して、それぞれの団体は以下のように話しています。
那須川天心が所属するRISEサイド
伊藤隆RISE代表は、2020年の興行について発表する記者会見を行っており、その際に記者との質疑応答で以下のように解答しています。
なお、会見では伊藤隆RISE代表に、前日に行われたK-1で武尊が「みんなが望んでいる試合、来年、オリンピックイヤーに実現させたいと思っています」と那須川天心戦について語ったと思われるマイクアピールについての質問が飛び、伊藤代表は「選手のアピールはいいと思っています。決まる決まらないは別として、発信の仕方はいいと思います。ただここで整理しておきたいのは、今年は武尊選手からずっと天心とやりたいとの発言があって、9月の天心のマイクはそれを受けて答えた。それ以上でもそれ以下でもないです。なので先方の関係者とは意見が食い違っています。天心は来年4月、6月、秋と試合が決まっていて海外も決まっているので、そこを考慮していただいた上でいろいろなことを話し合えば決まると思います」と答えた。
引用: 【RISE】世界トーナメント出場権を懸けて秀樹vs原口健飛、4人トーナメントも開催
https://gonkaku.jp/articles/2415
少し長いですが、選手同士のマイクアピールを整理した上でK-1サイドとの意見の食い違いがあることに言及し、もしも対戦するのであれば2020年の天心のスケジュールを踏まえた上で話し合いが進めば実現する可能性があることを話しています。
つまり、選手同士のマイクアピールと運営は別の話で、その運営同士の話し合いは現在では行われていないことが分かります。
武尊が所属するK-1サイド
一年前までは那須川天心側からマイクアピールで対戦を呼びかけることが多い印象でしたが、ここ一年で武尊から呼びかけることが多くなったと感じます。
ついに武尊本人から!これはいよいよ実現するのでは…?と期待に胸を膨らませたのは記憶に新しいです。
そんな中、K-1サイドは以下のように話しています。
中村プロデューサーは「那須川選手が武尊選手と戦いたいとアピールした9月16日はKRUSH後楽園ホール大会があったので、いろいろバタバタしていました。その後、発言があったことはメディアを通して見たり聞いたりしたました。武尊選手はK-1と契約していてK-1のチャンピオンです。その武尊選手と戦いたいとの意思があれば、まず所属ジムさんを通して我々K-1に正式にコンタクトをとってもらって、そこでK-1 JAPAN GROUPと契約してもらえれば戦う可能性はあります。新生K-1はスタートしてからその姿勢をずっと一貫してやってきたので、ここで変えることは基本的には考えてないです。
引用: 【K-1】那須川天心サイドから武尊戦の正式なコンタクトはない、交渉のテーブルに就いたこともない(中村プロデューサー)
https://gonkaku.jp/articles/1848
まず、武尊と対戦する場合はK-1のリングで然るべき手順を取ることが前提であることを話しています。割愛してますが、この後に中村プロデューサーは、元RISEチャンピオンの村越優太、皇治などの選手を例に挙げ他団体から正式に移籍して対戦が実現していることを説明しました。
選手同士のネームバリューがいかに高かろうと、特別扱いはしないという考えなのでしょう。至極ごもっともな解説ではありますがファンとしては拍子抜けです。
なぜ実現しないのか?両団体の背景は?
せっかく格闘技ブームが再燃して、ファンに熱望されてるんだからやったらいいじゃないか!
というのがファン含め大方の意見だと考えます。僕も同じ気持ちです。
ですが、運営側のことを考えると、確かに実現は難しいのかな…?とも思えてきてしまいます。
RISEサイドとしてはやっと日の目を見る形か
かつての格闘技ブームとして、ヘビー級を中心とした旧K-1やPRIDEが中心でした。
その時代でもRISEはキックボクシングの興行を行っていましたが、興行を通して育ってきた選手達がこぞって旧K-1に引き抜かれるような事態が発生していました。このようなことから旧K-1サイドとは仲がよろしくないような噂が飛び交うようになっています。
さらに旧K-1やPRIDEの終焉に伴い、格闘技ブームは終了し「格闘技の冬の時代」がスタートします。
その中でもRISEはコツコツと興行を重ね、那須川天心というスターを誕生させ、さらに大手であるサイバーエージェントグループとの取り組みができたことでabemaTVで試合の放映ができ、RISEワールドシリーズに見られるような大規模トーナメントが実施できるようになり、以前にもましてコンテンツとして充実しているのが現在の姿です。
K-1サイドには譲れない理念がある
旧K-1がヘビー級を中心として試合が組まれていたのに対して、現在は軽量級を中心にスター選手を量産しているように見える現在のK-1ですが、実はこれには理由があります。
100年続くK-1を…
引用:K-1オフィシャルHP 採用情報より
https://www.k-1.co.jp/recruit/
現在ではあまり大きく打ち出されなくなってきましたが、新生K-1と呼ばれていた当初はこの理念をわりと大きく打ち出していました。
実は2018年にK-1のプロデューサーが変わりましたが、この時にも「100年続くK-1」について言及されています。
(プロデューサーとして今までから変えたいことや、方針は?)まだ実行委員会のメンバーになって日が浅いのですけど、皆さんと仕事をする中で、「100年続くK-1」という目標、運営スタイル、ジムがあってアマチュアがあってKHAOS・Krush・K-1というピラミッドの頂点を目指すコンセプトに共感したのが、この仕事を受けた一番の理由です。
引用: K-1解説者・中村拓己氏が新K-1プロデューサー就任「今までの方針を受け継ぎつつ、新しいことにも挑戦したい」
http://www.boutreview.com/3/news/item_16433.html
前述のRISEでも記載しましたが、過去に「格闘技冬の時代」がありました。格闘技がスポーツとして定着せずに後世に残らず、あくまでブームとして終わってしまったのです。
これには格闘技ファンだった僕も格闘技との接点が無くなってしまったように感じて悲しかったですし、事実として格闘技から離れました。
あまり知られていないかもしれませんが、現在のK-1はグループとしてK-1の名前を使ったK-1ジムの運営からアマチュアの大会、野球で言う2軍のイメージの試合興行なども頻繁に行われています。
つまり、ファンを増やす活動をしつつ、K-1のスポーツ化に尽力しているのです。
両団体のスター選手の勝ち負けが問題じゃない
このように整理すると、今の時代を代表する選手達の勝ち負けの次元でない所がある、という部分が見えてきます。
格闘技の冬の時代を乗り越えて得た、「再びの格闘技ブーム」このようなブームを最大限に活用してきたのが10年前の旧K-1、PRIDEです。この時と同じことを簡単に繰り返さないように、他の選手たちも抱える団体として責任をもっていることも感じられます。
ただ、その格闘技も主役は選手達であることは間違いのない事実です。
那須川天心 vs. 武尊の試合が実現したら?
日本の格闘技ブームがピークを迎えることは間違い無いでしょう。チケットは飛ぶように売れ、さらに議論は過熱しそうです。
ですが、1人の格闘技ファンとして考えるのは、「これでまた格闘技がブームで終わるのでは?」という怖さがあります。
武尊もよく発言していますが、格闘技を野球やサッカーのようにメジャーなスポーツにしたい。僕はこの考え方が好きでずっと応援しています。
ですので、現時点の僕の結論は「見たいけど、終わらせたくない」です。引き続き2020年も選手を中心に発言が飛び交いそうですが、期待しつつ格闘技がよりたくさんの人にスポーツとして根付くことを一人のファンとして望んでいます。
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